脳性麻痺とはなに?
その1、 大人の障害 脳の一部が壊れ、手足やからだの一部または全体が麻痺した状態を脳性麻痺 と言います。からだ全体が麻痺し、ものを食べたり、飲み込んだり、息をし たり、声を出したりする、生きていくために最も大事な機能がおかされる時 もあります。足や膝や股関節が障害され、這ったり、寝返りをしたり、起き 上がったり、歩いたりする人の移動の機能が障害される時もあります。また 手を含めた上肢が麻痺し、日々の生活が出来にくく事もあります。その麻痺 の程度や症状は脳の尊称の程度や範囲に大きく関連します。体が動かない分 、学習の機会が減り、知的な学習能力でハンデイを負わされます。小さい時 から訓練訓練とせかされ、のんびりする生き方の機会を奪われ、人格形成に もハンデイを負わされる可能性もあります。 辛い病気です。 本当のつらさは大人になってから; しかし本当の苦痛や問題は大人になってからさらにはっきりした形でおこ ってきます。成長して大人になるまでに、筋の麻痺や過緊張が原因になり、 全身の関節が変形しさらに機能が下がり、運動能力が低下し、生きていく能 力が奪い去られていく、と言う恐ろしい、辛い病気でもあります。 ではどのように恐いのでしょうか 私は拙著「脳性麻痺の整形外科的治療(創風社)」にはまず三人の方を紹介 しています。最初のかたは60歳の御婦人です。足が内反足と言って内側に 曲がる変形で、それだけでも格好が悪いし、とても歩く能力を低下させる変 形なのですが、50歳を過ぎて、関節の外側の軟骨が崩れだし、痛みで歩け なくなってしまいました。車椅子に乗り、歩けなくなり、先々の豊かな生活 はなくなってしまいます。体を動かさないと体はすぐに弱ってしまいます。 命が短くなるのです。 たかが足の問題ではすまされないのです。若い時は我慢してても大人になり 外反母指が痛いとか、扁平足が痛みの原因になったりして、歩けなくなった かたがたが私のところを訪れます。尖足と言って爪先立ちの足も指先が痛ん だり、膝や腰が痛くなって歩く能力を低下させるのです。図、1A 図、1A:関節炎による歩行困難 62才の女性 アテトーぜタイプでもともとは歩行可能であった。 車椅子で受診 足関節の外側が腫れている。
図、1B:足関節固定術で変形を除き、体重を支えやすい足にする。 装具無しでの歩行が可能になり、帰って行かれました。 股関節の脱臼も恐い変形ですね。二人目の女性を見てみてください。 脱臼の痛みで体が痩せ細り、痛みを避けて横向きばかりをとるために下にな った側の骨のある部分に褥創ができています。褥創の痛みなど脱臼の痛みに 比べれば何ともないのですね。股関節の脱臼は脳性麻痺によく起ります。大 人になると必ず凄い痛みをもたらし、動くと痛いものですから動かなくなり、 痩せ細り、命が縮みます。寝たきりのひとに脱臼の治療をする必要があるの でしょうか?と時々いろいろな人に疑問を投げかけられますが、寝たきりの ひとでも脱臼があると体を横向きにしたり、おむつを取り替える時に脱臼し たもも(股)の骨と、骨盤の骨がゴツゴツとぶつかり合い、それは痛いので す。「痛いはずがない」というひともいますが、私に言わせますと、この発 言は一生の生きざまに対して責任を持たなくてすむ人たちの無責任な発言に すぎません。できるだけ早く、大きな手術を必要としない時に適切な手術を 受けるのが現在では正しい考えと言っていいでしょう。
図2A:股関節脱臼による股関節の痛みと全身の瘰痩 17才女性 右下肢が短いですね。脱臼していて短いのです。 左の骨盤と胸郭に褥創がありますね。 右を下にすると股関節の脱臼したところが痛いのです。 したがって左側を下にしていつも寝ていた。そして 左側に褥創ができた。褥創は我慢できても、脱臼した 股関節側を下にした時に起こる股関節の痛みは我慢できない。 股関節脱臼の痛みはそのようなすごい痛みである事がわかります。 右手で足の動きを抑え、痛みを少なくしてます。
図、2B:右の股関節の脱臼を整復し、両方の股関節の筋の緊張を除く 手術をしました。背中のそりを除く手術もしています。 痛みがとれ、ストレスがなくなり、まるまるふとってきて います。 大人になってアテトーゼを持った患者さんに起る脊髄症も恐い病気ですね。 3番目の男性は元気に自転車にも乗っていたと言う能力のあった方ですが、 首に異常な動きで首の軟骨が崩れ、脊髄に飛び出して脊髄を圧迫し、手足が 完全に麻痺し、褥創ができ、しっこやうんちは垂れ流しになってしまいまし た。療護施設などでよく見かけます。こんなひととても多いのですよ。しか も後で述べますが起ってきてもこのような恐い状態から逃れる事ができなか ったのですね。
図、3:右.脊髄が脊椎の骨で押しつぶされています。 左.頸から下は全く動かす事ができません。 アテトーぜ頚髄症の方は、適切な治療がなされないと、皆さん 最終的にはこのような状況になるのです。 このように脳性麻痺は本質的に大人になっていろいろな障害をもたらす恐い 病気なのです。したって麻痺を持ったかたがたは、一生を通じた視野の中で、 その障害から必死で逃れ、豊かな人生を追い求めていかなくてはなりません。 また私達、脳性麻痺の専門家は全力を傾けてそのお手伝いをすべき立場にあ ります。一緒にいろいろ考えて行きましょう。
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