とねっこ保育園の仲間達、3

訓練と手術・・・(RH君)

 早期訓練の必要性については、すでにのべました。
 色んなとりくみの中から自分のこどもに合った心ゆたかな訓練を選択し、実施
していきましょう。ただし、家庭や御主人を犠牲にしたり、経済的に無理をした
り、泣きわめくような訓練をこどもに強要したりする事のないような配慮は必要
です。
 訓練の考え方、やり方の基本につきましては、私が南江堂の御協力により「脳
性麻痺と機能訓練; 運動障害の本質と機能訓練」という著書を専門家むけに出
しています。勿論、発達の遅れたおこさんをお持ちの方々にも読んでいただき、
あせらない科学的な訓練を根気よく、やって行かれるようお薦めします。しかし
ながら、3才以上になってきますと、訓練だけには限界があり、緊張が残り、は
っきりした機能の向上が得られなくなってきます。
 手術を組み入れ、訓練と手術の組み合せで治療をすすめていく必要が出てくる
のです。

 RH君は5才でやはり保育園グループの方々から治療を依頼された男の子です。
生まれてまもなく小さい時から、ある療育センターに通って早期訓練を熱心に続
けられてこられました。
 しかし、這うレベルまでに達し、つかまり立ちも出来るようになりましたが、
これ以上進歩しません。体が細く、両方の膝が曲がり、いかにもこの曲がりが歩
行を障害しているように見えます。センターでは今後も訓練を続けて行かなけれ
ば、ほかに方法はないといわれたとの事です。そしてまもなく小学校に進学する
年齢に達し、県の就学指導委員会からは、能力的には車椅子レベルだし、施設に
はいって養護学校が適切であると判定される事になってしまいました。

 その少し前ROH君が通う保育園グループの園長先生が保育園グループの勉強会
で私どもの所を訪れられ、ROH君の今後の可能性について聞かれました。私の見
る所では、股関節と膝関節に痙性があり、曲がってしまって、このままでは一生
訓練で頑張っても歩けないだろう。しかし、両方の股関節と膝の関節の曲がり
と痙性をのぞく手術をすれば、歩けるようになると考えられ、そのように御両親
に話しました。まず両方のロフストランド杖(松葉杖)で歩くのは確実だろう。
そしてその上に訓練を積めば杖なし歩行もひょっとすると長い距離でなければ可
能になるかもしれない。そして体ももっともっと丈夫になり、お話も上手になり
ます、とお約束いたしました。また歩けるようになれば家の近くの小学校にも家
から通えますね、とお話いたしました。

 RH君の通っていた保育園のM園長先生は素晴しい考えの持ち主で、他県での治療
に難色を示される行政の方々を説得し、私達の園で手術が受けられるように、御
両親を支えてこられました。何回も私の園に足を運ばれ、回診にも参加されます。
このような過程で明かになりましたのは、訓練・訓練といって、訓練を受けさせる
ものの、機能の改善とか、獲得といった事に本当にとり取もうとしない現在の訓練
界のあり方に一部の方ではありますが大きな疑問を持たれている、という事でした。
私もRH君については地域の療育施設で治療をうける事を何回もおすすめし、ある時
は私自身の治療をおことわりした事もありました。しかし、御両親は頑として、私
の所で治療したい、と希望されたのです。

 私はこの御両親の毅然ととした態度のうらにM園長先生の深いRH君に対する思い、
さらには療育のあり方についての摸索があるのではないかととらえ、RH君を治療す
る事にいたしました。RH君はわたくしの園で両股・両膝の緊張を除く手術を行ない、
何とか歩かせるぞ、との思いをもった訓練をうけ、一年後の間に、ロフストランド
杖で園内を歩いています(訓練室内だけでなく)。そして今では私は彼の手を引い
てろうかを歩けるようになりました。彼は私の事を何故か園長先生といわずに松尾
先生と呼んでくれます。その言葉の中に何か深い意味があるのでしょう。彼の顔も
体もたくましく、ひようひようしたRH君はどこにもいなくなりました。
             図1:手術前、歩行車で歩けますが、
                杖では歩けません。(jfig45.2aより)
                  図2:股関節、膝関節手術
                   手術後、杖なし歩行も可能です。
                   家から学校に通っています。
                      (jfig45,2b1より)

 彼は私の所に来て、はやく家に帰りたい、と私をせかせます。屋外で少しでも歩
けるように体が強くなり、K市の地元の学校が受け入れ体制をととのえて下さった時、
私の役割は終り、わたしは彼と別れなければなりません。彼の地元での活躍を大い
に期待しながら、そして寂しい思いを胸にしまい込みながら・・・。


RH君地元の学校に歩いて通っています。
車椅子に乗って養護学校に通うのとどちらが長生きでキルか、充実した生き方が出
来るか、考えることの出来る大人がいるかどうかM園長の決断に敬意を表するもので
す。足が大きくなったら足の手術をすると、社会の一員として定着出来るでしょう。
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