千田さんと保育園の仲間

 とねっこ保育園は私立の保育園です。茨城県取手市の市街地調整区域の
一角に建てられています。園長の小松原子先生、副園長の志賀照彦先生を
中心に栄養士合せて6名のスタッフで社会的に生きていく力をつける保育
を障害のある子、障害のない子ともどもに実践されています。もう2年に
もなりましょうか、縁あって、出版会社の千田社長に知り合い、その仲間
であるとねっこ保育園の皆さんと親交を深めてきました。

 この園の特徴は障害を持ったこども達の能力をみつけ、育て、それに価
値を認めるという姿勢、こども意欲をどう引き出すかという視野、そして
こども達の人としての尊厳を大事にしている、ということです。園長の小
松原はこども達にコマちゃんとよばれ、日々の色々な場面でピアノを演じ、
こどもの豊かさを育てようといる素晴らしい方です。副園長の志賀先生は、
以前に学校の先生をされていたとのことですが保育園で障害を持ったこど
も達を育てる事にとりくみたいと、この仕事に参加されたとの事であり、
もの静かな雰囲気の中で、断固たる心構えで一人ひとりの子供の保育・教
育にあたられる、これまた素晴しいお人であります。またお若い保母さん
方も、お父さんお母さん方も絶えず一緒になって活動され、暖かい家庭が
一つあると思った方がいいのでしょうか。

 園は山の斜面に立っており、うしろは低く、田んぼが広がっています。
中央に広い板張りのロビーがあり、そこが園のそして保育の中心になって
います。中心棟の右手にはもう一つ大きな棟があり、こちらは学童保育と
いって学校から帰ってきたお子さんを放課後にお預かりしている、との事
です。

 私はどちらかというと福岡県という公的機関の中にいて、公的保育園と
いったものを垣間みている立場におりますが、この保育園の皆さんをみて
いますと、厳しい財政事情の中と思われますが、ぎりぎりの自助努力の中
で、障害のないお子さんはもとより、重い障害を持ったお子さんを暖かく
うけいれて、育児に苦労の多い御両親をいたわり、暖かいホームを作ろう
としておられるのを見て、私達もこんな努力をしなくてはならないんだと
いう思いに衝られる事がしばしばです。

 さてこのとねっこ保育園と整形外科医の私との接点ですが、障害児をど
う育てるか今の日本の障害を持った乳幼児訓練事情を反映してます。少し
紹介してみます。

 実はとねっこ保育園はふつうの保育園とともに原点から障害児の保育を
やろうという関係者の情熱を基盤に有志でお金を集め設定されたと伺って
います。しかも驚く事にその情勢と熱意は障害を治して、正常化させてし
まおう、と言う方向性を持ったものだったとも伺いました。

 この夢を実現させるために障害を訓練でなおす(特にボイタ訓練で)と
いう特定の人の指導のもとに徹底した訓練を実践してきた、といわれます。

 しかしながら、長い訓練をつづけたにもかかわらず、脳性麻痺を持った
こども達は結局治ることがなかった。奇蹟的な正常化は起らず、訓練で
本当に脳性麻痺か治ったとか、脳性麻痺の重要な症状である痙縮という緊
張が弛んだとかいった事は起らなかったようです。

 ところでこの脳性麻痺は治らず残ってしまうという現実を知った園の皆
さんは、設立の仲間である創風社社長の千田顕史氏とともに当時の鳥取大
学脳外科学(現東京女子医大脳外科学教授)の堀智勝(てんかん外科の権
威)にどうしたらいいか相談されたんですね。堀教授は脳性麻痺は早期訓
練では治らないと断定され、内外の文献を調べた上で、福岡の松尾がこの
研究をひとつの方向でやっているととらえ、この方々に紹介されたような
のです。そこで私に接触され、一緒に意見を交換する間柄になりました。

 私は本当に素晴しい、こどもを育てる仲間に会いました。この子育ての
素晴しさは、こどもの心をつかもうとする努力の素晴しさはどう表現して
いいかわかりません。そして、脳性麻痺児を医療の場で治療し、この仲間
達に帰す事によって、この仲間達が取り組む訓練や遊びやスポーツが、よ
り効果を持ったものになる事、を実感する事になりました。皆、子育ての
熟練しプロなんですね。

 同時にこのような保育園の仲間が全国にいて、障害を持ったこどもをど
うのびのび育てるかに心をくだいているのにびっくりしました。今から少
しづつ、この素晴しい仲間達の話をしていきたい、と思います。

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