斜め読み・走り読み

(2009年7月・8月)


奎章閣で発表してきました(2009年8月31日)

忙しい中、こんなことしていていいのだろうかと考えつつ、予定通り、ソウル大学校の奎章閣での国際シンポジウムに参加するため、ソウルにいってきました。シンポジウムについては後日、顛末を書きたいと思っています。前日に、国立中央博物館にいってきたのですが、統一新羅・渤海・高麗の展示がリニューアルされており、いろいろと勉強になりました。

杉井健編2009『九州系横穴式石室の伝播と拡散』北九州中国書店

2007年度に熊本でおこなわれた日本考古学協会分科会の記録集。各発表者の論考は、当日の議論をもとにさらにヴァージョンアップされており、読み応えがありました。本書によって、九州系横穴式石室に対するイメージが、ずいぶん整理・修正されていくのではないでしょうか。また、結果的に畿内系横穴式式石室の特殊性も明らかになったように思います。

池内敏2009『薩摩藩士朝鮮漂流日記 「鎖国」の向こうの日朝交渉』(講談社選書メチエ)

デジタルアーカイブで公開されることによって知られるようになった『安田義方 朝鮮漂流日記』を丹念に読み解きながら、「鎖国」時代における日本人と朝鮮人の交流の実相を明らかにした著作。私のような素人にとっても、面白く読めましたし、著者の思い入れがひしひしと伝わってきました。


集中講義にいってきました(2009年8月18日)

京都大学赴任当時は、7月下旬になれば、忙しさも一息ついていたのですが、最近は、オープンキャンパスや1回生向けのガイダンスがあったりと、行事が目白押しで、息つく暇がありません。さらに、8月10日から13日までは、島根大学で集中講義をしてきました。朝から夕方までしゃべり続けると、さすがに体(特に喉)がつらいです。せめてお盆休みは、と思うのですが、そんな余裕はどこにもありません(泣)。

島村利正1980『奈良飛鳥園』

ひょんなことから、奈良国立博物館に今も店を構える飛鳥園という美術専門の写真館を創設した小川晴暘について調べる必要があり、インターネットで探して購入した本です。評伝を期待したのですが、残念ながら小川を主人公とした小説です。どこまでが事実でどこまでが創作なのかを見極めるのが難しそうですが、おおまかな経歴を知ることはできました。あと、本人の顔を知りたかったのですが、彼の撮影した仏像のすばらしい写真ばかりだったのも、残念でした。

以下は、この間にいただいた論文・書籍です。どうもありがとうございました。

会下和宏2009「漢代における璧・鏡・刀剣の副葬配置について」『渡辺貞幸先生退職記念論集 考古学と歴史学』
大橋泰夫2008「国分寺と官衙」『シンポジウム国分寺の創建を読むU−組織・技術論−』
大橋泰夫2009「考古学からみた『出雲国風土記』の新造院と定額寺」『国士学考古学』第5号
大橋泰夫2009「国郡制と地方官衙の成立−国府成立を中心に−」『古代地方行政単位の成立と在地社会』
島根県立古代出雲歴史博物館2009『輝く出雲ブランド 古代出雲の玉作り』
島根県古代文化センター・島根県埋蔵文化調査センター2009『出雲玉作の特質に関する研究−古代出雲における玉作の研究V−』
角田徳幸2009「山陰・北陸の九州系横穴式石室」『考古学ジャーナル』583
中川寧2009「山陰の船−出雲市五反配遺跡の竪板と考えられる木製品−」『木・ひと・文化』
山田康弘2006「「老人」の考古学−縄文時代の埋葬例を中心に−」『考古学』W
山田康弘2009「墓制からみた中国地方の縄文社会」『島根大学法文学部紀要社会文化学編社会文化論集』第5号
水野敏典2009『古墳時代鉄鏃の変遷にみる儀仗的武装の基礎的研究』
上野祥史2009「歴史研究の展示へのまなざし」『歴史学研究』No.855
小黒智久2009「新潟県村上市磐舟浦田山2号墳石室の再検討」『新潟県の考古学U』


祇園祭も終わり。。。(2009年7月31日)

小倉紀蔵2008『日中韓はひとつになれない』角川oneテーマ21

大学の図書館へ他の本を探しにいった時に、挑発的な題目に引かれて借り出してきました。この10年ほどの「東アジア」の動向を哲学的に考察し、「東アジア共同体」ではなく、「東アジア共異体」の形成を提唱するのが本書の論旨ということでしょうか。具体的に共感できる部分は少なくないのですが、やや強引にみえる立論や議論の進め方には、違和感を覚えてしまいました。そうした方が、読み物としては面白いのでしょうが。

長井謙治2009『石器づくりの考古学−実験考古学と縄文時代のはじまり−』同成社

長井君は、立命館大学勤務時の学生でした。先日、日本考古学協会で久しぶりに会ったところ、博士論文が本になったとの話を聞き、後日、献本してもらいました。細かな記述はとばしつつ走り読みしましたが、学部時代から熱心に取り組んでいた石器製作実験を、実際の考古資料にどのように適用するのか、という大変な問題にしっかり取りくもうとする姿勢がよくでていました。私もまけずにがんばらなければ。

丸山茂樹2009『青春の柳宗悦−失われんとする光化門のために』社会評論社

資料を提供した縁で送っていただいた本です。民芸運動を本格的に始めるまでの柳宗悦の半生をテーマとした小説です。以前から関心がありながら、本格的な勉強をしていなかった分野であったので、面白く読むことができました。小説ですから、いちいち註がつけられたりはしないわけですが、かなり関連文献を読み込んでおられることがかいま見られる作品です。

以下は、この間にいただいた論文・書籍です。どうもありがとうございました。

日韓相互認識研究会2008『日韓歴史共同研究プロジェクト第9回シンポジウム報告書』
日韓相互認識研究会2009『日韓歴史共同研究プロジェクト第10回シンポジウム報告書』
「日韓相互認識」研究会編2008『日韓相互認識』第1号
「日韓相互認識」研究会編2009『日韓相互認識』第2号
京嶋覚2009「ガラス小玉鋳型出土の意義」『古代学研究』第182号
松村恵司・広瀬覚・岡林孝作・相原嘉之2009「高松塚古墳の石室解体に伴う発掘調査」『日本考古学』第27号
田中俊明2009「いわゆる「任那4県割譲」記事の新解釈」『韓国古代史研究の現段階』
姜真周2007「漢江流域新羅土器の性格」『先史と古代』26
松尾充晶編著2009『めんぐろ古墳の研究』(島根県古代文化センター調査研究報告書42)
小林善也2004「山口県の古式須恵器について−その編年と地域相−」『古文化談叢』第51集
小林善也2006「下関市豊北町域の弥生時代遺跡」『土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム研究紀要』第1号
小林善也2008「須恵器出現期以降の古墳時代集落出土の土器編年試論−周防西部地域−」『古墳時代聚落出土の須恵器・土師器−5世紀から7世紀にかけての山口県の土器様相−』山口考古学フォーラム
岐阜市歴史博物館2009『岐阜市歴史博物館研究紀要』19
魚津友克2009「弥生・古墳時代の手鎌−全形復原と用途の推定−」『木・ひと・文化』


後半戦開始!(2009年7月11日)

鄭仁盛・吉井秀夫・崔英姫2009『日本所在高句麗遺物U(日帝強占期高句麗遺跡調査再検討と関西地域所在高句麗遺物1)』東北亜歴史財団

昨年後半から全ての予定を狂わせてきた元凶(?)である報告書がようやく刊行されました。京都大学総合博物館に所蔵されながら、これまで実態が明らかではなかった、1916年に山田セ次郎氏が寄贈した平壌出土高句麗瓦約280点の図面と写真を公開することができました。ここまでくるまでには、書くことができないようないろいろな問題があったのですが、最終的にはまずまずの出来上がりでしたので、一安心しています。

ラインハルト・ツェルナー(植原久美子訳)2009『東アジアの歴史 その構築』明石書店

ドイツ人東アジア史研究者である著者が執筆した、ドイツ人の学生向けの東アジア史概説書の翻訳を中心とした著作です。東アジアの定義を「普段の食事に箸を使う地域のことである」とされたのには、驚かされました。概説の記述については、内容自体はよく知っていることばかりですが、それを説明する用語や視角が違う場合が少なくありません。外からみれば「東アジア」がどのようにみえるのかを知ると共に、自分自身が「東アジア」のさまざまな「前提」にからめとられていることを実感させられる本だと思います。

以下は、この間にいただいた論文・書籍です。どうもありがとうございました。

東村純子2009「地機の到来と輪状式原始機」『木・ひと・文化−出土木器研究会論集−』
吉田広2009「銅鐸分布圏の武器形青銅器素描」『一山典還暦記念論集 考古学と地域文化』
長井謙治2009『石器づくりの考古学−実験考古学と縄文時代のはじまり−』同成社
早稲田大学朝鮮文化研究所・大韓民国国立加耶文化財研究所編2009『日韓共同研究資料集咸安城山山城木簡』(アジア研究機構叢書人文科学篇第三巻)雄山閣
美浜町誌編纂委員会編2009『わかさ美浜町誌 美浜の文化第6巻(掘る・使う)』
大久保徹也2006「古墳論−<王>を複製する試み−」『日本史の方法』第3号
大久保徹也2008「バケツリレー的物資調達方式は有効なモデルか?−または弥生社会は如何にして心配することを止めて非自給物資を調達したか−」『日本史の方法』Z
橋本繁2008「韓国木簡のフィールド調査と古代史研究−咸安・城山山城木簡の共同調査より−」『史滴』30、早稲田大学東洋史懇話会
橋本繁2009「城山山城木簡と六世紀新羅の地方支配」『東アジア古代出土文字資料の研究』雄山閣


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