<解析力学ノート>
 

[プロローグ]

遥か数拾年前の学生時代、半年間の解析力学のセミナーに出席した。テキストは名著Goldsteinの「古典力学」。ダランベールの仮想仕事の原理から一般化座標というものを定義し、また、L=T-VとしてLagrangeの方程式を導く。滑車の例題なんかNewton流のやり方ではわずらわしさを感じていたがLagrangianを使うといとも明快に解けることにいたく感動した!!(^^)
とまぁここまではフムフムとよかったのだが、変分原理のあたりから少し怪しくなってきた(^^);。。。 あとは”若さ”と”気力”だけでセミナーにでていたいたような。。。 結局、セミナーは第U章 変分原理とLagrangeの方程式それから第Z章 Hamiltonの運動方程式と第[章の正準変換の途中までで終わった
。。。

まぁ、それから折にふれては解析力学のテキストを紐といてはみたりしたが、数式の変形を追うだけで中身の理解がサッパリだったり、一体母関数って奴はナンだ! 正準変換でナンだ!というあたりでいつもグルグル回りで(^^);;そのうちテキストに埃がかぶるようになった。。。

それからズ〜ット Zu〜ットたったある日、インターネットでHoyapのサイトを見つけた。そこではネットで解析力学の輪読をやるということで、果たして現役の学生さん達についていけるかしらと大いに逡巡しながらも遅ればせながらもエントリーすることにした。テキストは高橋 康(小生この先生のファンであります)の「量子力学を学ぶための解析力学入門」増補改訂版2版。この本の存在は初版の頃から知っていた。当時、本屋でパラパラとページを繰ってみたが、初等的なことばかりで大したないなぁと、”傲慢”と”偏見”により本屋にすておいた(^^);のだが、今回改訂版を購入しネットの輪読にあわせて読み進んでいくと、ナンと懇切丁寧にわかりやすくしかもコンパクトに要領よく、かつ物理的な深い意味まで記述されているなぁとあらためて感銘を受けた次第であります。(^^);;

ま、そう言うことでふたたび解析力学を勉強する機会に恵まれたわけで、積年の疑問もなんとなく解ったような気(理解したわけではない・・・念のため)になってきた。

小生のように解析力学ってサッパリ解らないとか、名前を聞くのもオゾマシイとい思っていらっしゃる方もおられると思いますが、以下の小講がに少しでもお役に立てれば。。。

 小生がお世話になっているサイト→    




《解析力学ノートのメニュー

1 仮想仕事の原理


2 変分原理とEuler-Lagrangeの方程式


3 正準運動方程式と正準変換


4 Hamilton-Jacobiの理論


5 Poison括弧


6 位相空間


Lagrangianの対称性と物理量  New!!







1.仮想仕事の原理

仮想仕事って仮想の仕事のことか。ならば一体何の役に立つ?とお考えのあなた、あなたですよ〜!!えっ、ヒョッとして俺のことかな、まっいいや(^^)。

ここでは力学系の釣り合いというものは一体なにか、というようなことを追求して
最後にEuler−Lagrangeの方程式を導き出すというすごい事をやります。

小生が学生時代に解析力学のセミナーではじめて仮想仕事の原理を習ったとき先生(たしか素粒子論を専攻されていたと記憶するが)は仮想変位の説明を次のようになされた。「映画はフィルムのコマ送りで動いているように見えますね。ところでその中から1コマ取り出して、そこに写っているブツを少し動かしてやる。それが仮想変位というものです。」 フ〜ん、そんなものか。なんとなく分かったような、大体のイメージがつかめたような気がした。しかし、ナンでそんなもんを考えんといかんにゃ〜(関西弁まるだし)(^^);;という点についてはほとんど深く追求しなかったが。。。また仮想仕事の考え方からEuler-Lagrangeの方程式がでてくるのには正直いってびっくりした(^^)。



詳細はこちら ⇒ 仮想仕事の原理とEuler-Lagrange方程式.pdf


                                 




2.変分原理とEuler-Lagrangeの方程式

たしか学部3回生こころだったかなぁ、Huckelの分子軌道法というものを習った。なんとベンゼンのエネルギー順位が非常に簡単な計算ででてくるのにびっくりしたが、そこではじめて変分法というものを知った。まぁとにかく変分マニュアルに従って計算すればエネルギーが計算できた。

さて、前講の「仮想仕事の原理」では、系の運動のある瞬間の状態と、その状態からの仮想変位(無限小変化)の考察−D’Alembertの原理−を出発点としてEuler-Lagrangeの方程式を導いた。このやり方は、いわば ”微分原理” を出発点としたものである。

しからば ”積分原理” というようなものからEuler-Lagrangeの方程式が導かれるのではないかとなるわけで、これがHamiltonの原理(変分原理)といわれるものである。時刻 t1 から t2 の間にわたる系の運動の全体について、系が実際に行なう運動を決めるのに、この運動からの仮想変位的な変動(変分)を考え、この変分が極値をとるようにする。


詳細はこちら ⇒ 変分原理とEuler-Lagrangeの方程式.PDF


                                 




3.正準運動方程式と正準変換

Newtonの運動方程式のかわりにEuler-Lagrangeの運動方程式ですべてこと足りたのではないか? Hamiltonianというものが飛びだしてきたが、HamiltonianとLagrangianはどこがどうちがうのだ!
正準変換ってただの座標変換とちがうんかい、えらい仰々しい名前がついているなぁ。あのLagrangianはどうなるのだ。せっかく少し親しみを持ててきたのに。。。 また、母関数って一体なにものだ。やたらと偏微分ばかりでてきて目に悪いではないか。。。
3-1.正準形式の理論
3-1-1.Lagrangianの適用限界

えらい高尚な名前を付けて失敗したと思ったが(^^); あとに引くわけにはいかぬ。このまま進もう。もちろん深遠なことを言えるはずがない(^^)。

さて、一般に自由度f個の力学系は、

         Lagrangian L=L(q1,q2,・・・qf,q1',q2',・・・qf')         @

を用いて次のf個のEuler-Lagrange方程式で記述できた。

        d/dt(∂L/∂qi')−∂L/∂qi=0    i=1,・・・f               A

また、考えてきた変数変換は

        qi=qi(Q1,Q2,・・・,Qf)

の形のもので、右辺にはQの時間微分が入っていない場合であった。もし、右辺にQ’が入っていたらLagrangianを変換するとQi,Qi',Qi''の関数となって”Lagrangianは変数とそれらの1階微分の関数である”という枠組(@式参照)をはみ出し、理論が使えなくなっちゃう。この点を改良し、さらに広い形の変数変換を許すようにしたのが「正準変換の理論」という訳ですな(^^)。次にこの話題に移る。


3-1-2.正準形式の理論

この理論のミソは、変数の数を増やして時間微分の階数を下げる。すると、その増やした変数の間で時間微分を含まない変数変換が考えられるという点にあります。次に簡単な具体例を見てみましょう。
Newtonの運動方程式は時間について2階の微分方程式となる。


         md2/dt2=F

ところでこの方程式を簡単化するために、実際の運動では位置xと運動量pの変化は無関係ではありえないが、ここでは位置座標も運動量(=mdx/dtも”変数”と考えて時間微分の階数を1階下げるというやり方が普通やられていますね。その結果次の方程式となる。

         dp/dt=F

成るほど時間の1階微分方程式となった。するともっと複雑な力学系にもこれと同じやり方を適用できないかとなってきますね。そのためには、一般化座標とか一般化運動量とか呼んだように、まず運動量という概念をNewton流の質量×速度という定義から拡張する必要がある。そして新しく定義した運動量を”独立変数とみなす”ことにします。具体的に新しい運動量を次式て定義する。

        pi≡∂L/∂qi’

ここで天下り的であるが、Hamiltonianを登場させる。(^^);
Hamiltonianを次式で定義する。


        H = Σpiqi'-L

正準運動方程式は

        qi'=  ∂H(q;p)/∂pi
        pi'= -∂H(q;p)/∂qi    i=1,・・・,f

となります。この式は変数 pi を増やしたかわりに時間微分の階数を下げることができた(^^)。


詳細はこちら ⇒ 正準形式の理論.PDF


                                 




3-2.正準変換と母関数

3-2-1.正準変換と母関数
正準変換とは一般に正準運動方程式が成り立つ新しい変数の組Qi,Piへの変換であると定義されます。つまり正準変換後のHamiltonianをKとすると

        qi'=  ∂H(q;p)/∂pi     正準変換    Qi'=  ∂K(Q;P)/∂Pi
        pi'= -∂H(q;p)/∂qi              Pi'= -∂K(Q;P)/∂Qi

正準変換は母関数(W)というもので完全に規定されます。母関数ってナンだということについては「正準変換と母関数.pdf」を見ていただくとして、ここでは天下り的に(^^);母関数をWとすると、正準変数は母関数から次式によって導かれるということを知っておけばよいでしょう。

[注意] @〜Cの母関数Wはそれぞれ独立変数の異なった母関数で、決して同じ母関数ではありませんよ〜!(詳しくは「正準変換と母関数.pdfを参照」)。

         @ pi= ∂W/∂qi, Pi=-∂W/∂Qi, K=H+∂W/∂t
         A qi=-∂W/∂pi, Pi=-∂W/∂Qi, K=H+∂W/∂t
         B pi= ∂W/∂qi, Qi= ∂W/∂Pi, K=H+∂W/∂t
         C qi=-∂W/∂pi, Qi= ∂W/∂Pi, K=H+∂W/∂t

ということで1つ具体的な例題をやって見ます。

【例題】
直交座標(x,y)から円筒座標系(r,φ)への母関数による正準変換を求めよ。

【解】
x=rcosφ, y=rsinφと書けますね。Aの関係式を使う。母関数Wのpx,pyでの微分で x, y が出てくるようにWとして
        W=-px・rcosφ-py・rsinφ
とすればよいことがわかります。するとA式より
        Px=-∂W/∂r, Py=-∂W/∂φ
となりますから正準変換後の新しい運動量Pは次式で与えられます。
        Px=pxcosφ+pysinφ, Py=-pxrsinφ+pyrcosφ  //



詳細はこちら ⇒ 正準変換と母関数.PDF


                                 





3-2-2.無限小変換


変換の中でもpi=Pi、Qi=qiという変換は何も変換していない変換で、これを恒等変換といいます。ところで恒等変換からほんの少しだけずれた変換を無限小変換といいます。無限小変換は正準変換であるので、無限小変換の母関数が存在します。そこで、「座標の無限小推進(空間推進)」「無限小回転」「時間推進」の無限小変換を考えると、それぞれの変換を生み出す母関数が存在するわけで、この母関数は実はあっと驚くものだったということになります。
ここでは結果だけを書いておきます。詳しくは「無限小変換.pdf」を参照してください。


(1)座標の無限小推進

Xを新しい座標系での位置ベクトル、を旧座標系での位置ベクトルとします、εは無限小成分を持ったベクトルとします。すると座標の無限小推進は次式で与えられますね。
       Xε
このように各座標軸は平行だが、原点がずれた新しい座標系で物理系を記述し直すことを、空間推進といいます。
両座標系で、粒子の速度は同じですから運動量も同じですね。そこで無限小変化は次式で書くことができます。

       δxi≡Xi-xi=εi
       δpi≡Pi-pi=0    i=1,2,3
ここから、次の重要な結論が得られることになります。

   空間推進の母関数は本質的に運動量である


(2)無限小回転

x-y座標系を書くθだけ回転したX-Y座標系で記述した位置ベクトル成分を(X,Y)とすると
      X=xcosθ+ysinθ
      Y=-xsinθ+ycosθ
となりますね。今、角θが無限小であるとき、それをεと書くと、無限小回転は次式で与えられます。
     δx≡X-x=εy
     δy≡Y-y=-εx
また、xとy方向の運動量も同様にして次式で与えることができます。
     δpx=m(X'-x')=εpy
     δpy=m(Y'-y')=-εpx
ここから、次の重要な結論が得られることになります。


     
無限小回転の母関数は角運動量である。


(3)時間推進

時刻tの正準変数をqi(t)とpi(t)とします。このとき、時刻がεだけずれた座標系において、それらがそれぞれQi(T),Pi(T)であるとすると
      Qi(T)=qi(t)
      Pi(T)=pi(t)
が成り立ちます。ここで T=t+εとする。
ここから、次の重要な結論が得られることになります。


    無限小時間推進の母関数はHamiltonianである。

もっとくだいて言うと、

   
時間間隔 dt の間の系の運動はHamiltonianを母関数とする無限小変換によって記述できる

ということになります


詳細はこちら ⇒ 正準変換と無限小変換.pdf


                                 




4.Hamilton-Jacobiの理論

Hamilton-Jacobiの方程式といえば、昔みた(読んだとはいわない)シュレーデインガーの波動力学論文選集の中で、彼がはじめて量子力学の波動方程式を導き出した第1論文に載っていたなぁ(論文選集)。まぁその高踏的な導き方は遥かに小生の理解を超えたものであったが、

        ∂S/∂t+H(q;∂S/∂q,t)=0

というような方程式が載っていたことを、不思議といまでも憶えている。方程式の姿がスッキリとしていてかっこうよかったからかも知れぬ。しかし、Sとは一体なんだということも同時に思ったことも思い出す。
Hamilton-Jacobiの方程式とは一体ナンだということになるわけですが、その前に正準変換と母関数の項を再読しておくことをおススメします。

さて、
Hamilton-Jacobiの方程式とは一体なんだという先ほどの命題に戻りますが、それはうまい正準変換を考えて運動方程式を楽に解くようにするための処方箋である。。。と小生は考えております。

この一端を具体的な例で見てみましょう。
【例】
質量1、角振動数ωの1次元調和振動子を考える。Hamiltonianは

        H=ω/2・(p2+q2)

となります。この調和振動子の運動をp、q空間(位相空間)上で描くと、角速度ωの反時計回りの等速円運動となりますね。つまり質点は半径√(2E/ω)の円周上を反時計回りに一定速度でクルクル回っていることになる。そこで、角速度ωで回転している回転座標系に乗り移ると質点は止まって見えることになりますね。まぁ、いってみればこのような座標変換をした場合の方程式がHamilton-Jacobiの方程式だと小生は理解しています。
さて、q、p平面に垂直な軸の回りの角速度ωの回転座標をQ,Pとすると

       q=Qcosωt+Psinωt ⇔ Q=qcosωt−psinωt
       p=Pcosωt−Qsinωt ⇔ P=pcosωt+qsinωt

となる。この変換を与える正準変換の母関数Wは(天下り的であるが(^^);;)


        W(q,Q,t)=(qcosωt−2qQ+Qcosωt)/2sinωt

本当にこれが求める母関数であるか、以下に検証すると、母関数はq,Q,tの関数であるから、正準変換と母関数の項を参考にして

       p=∂W/∂q よりQ=qcosωt−psinωt
        P=−∂W/∂Qよりq=Psinωt+Qcosωt

が得られる。これからこの母関数は正しい母関数であることがわかった。さて、変換後のHamiltonianをKとすると K=H+∂W/∂t となる。∂W/∂tを計算すると

       ∂W/∂t=−ω/2(P+Q

一方もとのHamiltonianは

       H=ω/2(p+q)=ω/2(P+Q

従って変換後のHamiltonian Kはゼロとなる。正準方程式は

      Q’=∂K/∂P=0、 P’=−∂K/∂Q=0

となり、これから Q=定数、P=定数という結果が得られる。つまり回転座標系P-Qでは調和振動子の質点は「静止」を続けるということになるわけですね。

前振りはこのくらいにして、詳細は次のレポートを参照してください。

詳細はこちら ⇒ Hamilton-Jacobiの理論.pdf


                                 




5.Poisson括弧

量子力学でおなじみの交換関係は、古典力学のPoisson括弧からの類推から導かれた(ディラック量子力学原書第4版P113)。
ここでは、Poisson括弧の性質やPoisson括弧と正準方程式との関係、また、無限小変換との関係などを調べてみましょう。


細はこちら ⇒ Poisson括弧.pdf


                                 





6.位相空間




7.Lagrangianの対称性と物理量

『さぁ、お立会い!これでラグランジアンというものが解ったね。 L=T−Vとおいて、Tは運動エネルギー、Vはポテンシャルエネルギーだ。
これさえ分かればあとは簡単。Euler-Lagrangeの方程式を解けば、求める力学系の運動がポポンポンと出てくる。これでバンザ〜イ、バンザ〜イっツいうところだが。。。シカシねェ、お立会い、世の中そう甘くはないんだよネェ。。。

例えば、1次元の力の働いていない自由粒子を考えてみよう。この場合、ポテンシャルは0であるから、上の処方箋にしたがってLagrangianは
            L=(1/2)mx’^2
だとすぐ分かる。このLagrangianはEuler−Lagrangeの式より確かに自由粒子の運動方程式
(mx”=0)を与える。しかしこれで安心してはいけないよ、お立会い。
Lagrangianとして
           L=exp(αx’)
という奴を考えても、Euler−Lagrangeの式より自由粒子の運動方程式を与えるんだ。まぁ、少し手を動かしてやってみていただきたい。詳しくはテキストP44に載っているね。。。しかしこうなると、L=T−Vと金科玉条のように覚えていた公式(?)は甚だ心もとなくなってくる。結局、Lagrangianは「唯一ではない(Lagrangianの多様性)」という。。。びっくりする事実が白昼堂々の事実となってきたのだお立会い、ババンバンバン。

しからばどうするか。ここで登場するのがかの有名なNoetherの恒等式なのである。この恒等式のおかげで有象無象のLagrangianの中から真の自然現象を記述するLagrangianを選び出すことができるようになったのだ。
さぁ、さぁ、お立会い、お立会い、押さないで、押さないで、まだまだ席は空いているよ。オッ、そこのお立会い、入り口でモゾモゾしていないで入った入った!』という威勢のいい呼びこみの声でハット目を覚ましました。机の上にはテキスト7章 Lagrangianの対称性と物理量の定義が開かれています。


詳細はこちら ⇒ Noetherの恒等式.pdf